育児・介護休業法とは:産休・育休で知っておくべき労働者の権利と会社の義務
産休・育休の取得は、働く方にとって大切な権利ですが、特に中小企業で前例が少ない場合、どのように進めれば良いのか、自分の権利はどこまで認められるのか、といった不安を感じることは少なくありません。産休・育休を安心して取得するためには、法的な根拠である「労働基準法」と「育児・介護休業法」について正しく理解しておくことが重要です。
この法律は、働く人が仕事と育児・介護を両立できるよう支援し、その権利を保障することを目的としています。自身の権利を知ることで、会社とのコミュニケーションも円滑に進めやすくなります。
育児・介護休業法とは:産休・育休で働く人が知っておくべき基本知識
育児・介護休業法は、正式には「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といいます。この法律は、男女問わず、育児や介護を行う労働者が休業や時短勤務などの制度を利用できるように定められています。
この法律の重要な点は、原則として全ての会社(規模の大小を問わない)に適用されるということです。つまり、たとえ前例が少ない中小企業であっても、法律に基づいた制度を利用する権利があります。
産前・産後休業に関する労働基準法のポイント
産前・産後休業(一般的に「産休」と呼ばれます)については、主に労働基準法で定められています。
- 産前休業: 出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から取得できます。請求すれば会社は拒否できません。
- 産後休業: 出産日の翌日から8週間は就業できません。これは強制的な休業期間であり、産後6週間を経過した後に本人が請求し、医師が支障ないと認めた場合は就業できる場合があります。
会社は、これらの期間中の女性を働かせることは法律で禁止されています(産後6週間の例外を除く)。また、産前産後休業を取得することを理由として、会社が労働者を解雇することは法律で禁止されています(労働基準法第19条)。
育児休業に関する育児・介護休業法のポイント
育児休業は、原則として子が1歳になるまでの間、取得できる休業です(特定の条件を満たせば最長2歳まで延長可能)。
- 対象者: 原則として、1歳未満の子を養育する男女労働者で、会社に引き続き雇用された期間が1年以上であることなどが要件となります(期間の定めのない労働者の場合など、より詳細な要件があります)。日々雇用される方などは対象外となる場合があります。
- 取得の申し出: 育児休業を開始しようとする日の1ヶ月前までに、会社に書面などで申し出る必要があります。会社は、この申し出を原則として拒否することはできません。
- 育児休業中の就業: 育児休業期間中は、原則として働くことはできません。ただし、労使協定がある場合などに一時的・臨時的に就業することは認められる場合がありますが、基本的な考え方は「休業」であるため注意が必要です。
- 育児休業の延長: 保育所に入所できないなどの特定の理由がある場合、子が1歳6ヶ月まで、さらに2歳まで育児休業を延長できます。延長するためには、それぞれ期限までに再度会社に申し出が必要です。
会社が果たすべき義務と禁止事項
育児・介護休業法は、労働者の権利を保障すると同時に、会社が取るべき対応や禁止事項についても定めています。
- 育児休業取得への協力を図る義務: 会社は、育児休業に関する社内制度を整備したり、労働者からの相談に応じたりするなど、育児休業の取得を円滑に進めるための努力をする義務があります。
- ハラスメント防止措置: 会社は、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(いわゆるマタハラ、パタハラ)を防止するための措置を講じる義務があります。
- 不利益取扱いの禁止: 会社は、労働者が産前産後休業や育児休業を取得したこと、または申請したことなどを理由として、解雇したり、降格させたり、不利益な配置転換を行ったりするなど、労働者に不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています(育児・介護休業法第10条、第16条など)。これは、労働者の権利を保護するための非常に重要な規定です。
法的な権利を行使する上での注意点
ご自身の権利を知ることは、安心して産休・育休を取得するための第一歩です。しかし、法律の規定だけではなく、会社の就業規則や労働協約も確認することが重要です。会社独自の規定が、法律を上回る内容で定められている場合があるためです。
会社に前例が少ない場合でも、法律に基づいて権利を主張することができます。会社とのコミュニケーションにおいては、口頭でのやり取りだけでなく、申し出は書面で行う、会社からの通知も書面で受け取るなど、記録に残る形で行うことを心がけると、後々の誤解やトラブルを防ぐことに繋がります。
もし、会社から不当な扱いを受けていると感じた場合や、法律について詳しく知りたい場合は、後述するような外部の相談窓口を利用することも検討してください。
まとめ:権利を知り、安心して産休・育休の準備を進めましょう
産休・育休に関する法的な権利(労働基準法、育児・介護休業法)を理解することは、安心して準備を進める上で非常に強力な支えとなります。特に、会社に前例が少ない状況では、ご自身で正確な知識を持つことが、会社との建設的な話し合いを進める上でも役立ちます。
法律は、働く女性・男性がライフイベントに合わせて働き続けられるように定められています。ご自身の権利を正しく理解し、会社の制度や就業規則と照らし合わせながら、計画的に産休・育休の準備を進めていきましょう。万が一、不安や疑問が生じた場合は、一人で抱え込まず、会社の担当部署や外部の専門機関に相談することをお勧めします。