保育園慣らし保育と職場復帰:会社への報告・手続き・確認事項
慣らし保育期間中の会社との連携はなぜ重要か
育児休業からの職場復帰に向けて、お子さまが保育園に入園し、慣らし保育の期間が始まります。この慣らし保育期間は、お子さまが新しい環境に慣れるための大切な時間であると同時に、保護者の方にとっても職場復帰に向けた最終調整期間となります。
特に、中小企業にお勤めの場合や、会社での産休・育休取得前例が少ない場合、慣らし保育期間中の勤務形態や会社との連携について、どのように進めれば良いか不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
慣らし保育期間中の会社の取り扱いや手続きは、その後の円滑な職場復帰に大きく影響します。会社への適切な報告や必要な手続きを事前に確認しておくことで、安心してこの期間を過ごし、職場復帰を迎える準備を進めることができます。
この記事では、慣らし保育期間中に会社との間で確認・手続きすべきことについて、具体的なポイントを解説します。
慣らし保育期間とは
慣らし保育とは、保育園に入園したお子さまが、集団生活や新しい環境に段階的に慣れるための期間です。一般的に、最初は短時間から始まり、お子さまの様子を見ながら少しずつ保育時間を延ばしていき、最終的に通常の保育時間へと移行します。期間は保育園や個々のお子さまによって異なりますが、数日から2週間程度、長い場合は1ヶ月程度かかることもあります。
この期間、保護者の方は保育園の送迎に対応するため、通常の勤務時間での就労が難しい場合があります。
慣らし保育開始前の会社への報告・相談
慣らし保育が始まることが決まったら、早めに会社に報告・相談することが重要です。
いつまでに報告すべきか
- 就業規則の確認: 会社の就業規則や育児休業規程に、復帰に関する報告期限が定められている場合があります。まずは会社の規程を確認してください。
- 保育園の内定・入園決定後: 保育園の内定や入園が決定し、具体的な慣らし保育の期間や入園日、それに伴う職場復帰予定日が見えてきた段階で速やかに報告するのが一般的です。
- 慣らし保育期間の判明後: 保育園から慣らし保育の詳細なスケジュールが提示されたら、改めて会社に具体的な期間を伝えます。
誰に伝えるべきか
直属の上司や、人事・労務を担当する部署に連絡します。会社の規模や体制によって連絡先が異なるため、不明な場合は事前に確認しておくとスムーズです。
何を伝えるべきか
- 保育園への入園が決定したこと
- 慣らし保育の開始予定日と期間
- 慣らし保育中の送迎時間や必要な配慮
- 慣らし保育期間中の勤務形態に関する希望や相談(後述)
- 最終的な職場復帰予定日(フルタイム復帰や時短勤務への移行日など)
慣らし保育期間中の勤務形態と手続き
慣らし保育期間中の会社の取り扱いは、主に以下の2つのパターンが考えられます。
1. 育児休業期間中に慣らし保育を利用する場合
多くの保護者の方は、育児休業期間を保育園の入園日まで取得し、入園後に慣らし保育を利用するケースが多いです。この場合、慣らし保育期間中は引き続き育児休業期間中ということになります。
- 育児休業給付金への影響: 原則として、育児休業期間中に就労した場合、育児休業給付金の支給対象外となります。ただし、例外として「育児休業期間中の就業日数が月10日以下、かつ就業している時間数が月80時間以下」である場合は、支給されることがあります。慣らし保育期間中に一時的に会社から頼まれて短時間勤務をするなどの場合は、この条件に当てはまるか確認が必要です。 (参照: 厚生労働省「育児休業給付金に関するQ&A」等)
- 会社との調整: 育児休業期間中は原則就労義務がないため、会社との話し合いで慣らし保育のための時間確保について理解を得る必要があります。
- 社会保険料: 育児休業期間中は引き続き社会保険料の免除対象となります。
2. 慣らし保育期間を「ならし勤務」として扱う場合
会社によっては、慣らし保育期間を一時的な短時間勤務期間(ならし勤務)として扱い、職場復帰の一部とみなす場合があります。この場合、育児休業は慣らし保育開始前に終了し、職場復帰した扱いになります。
- 勤務形態: 本来の勤務時間よりも短時間勤務となります。育児・介護休業法では、3歳未満の子を養育する労働者は、申し出により所定労働時間の短縮措置を受けることができます(事業主には短縮措置を講じる義務があります)。慣らし保育期間中は、この短時間勤務制度を活用する形で対応することが考えられます。
- 賃金: 就労した時間に応じた賃金が支払われます。
- 社会保険料: 育児休業が終了しているため、社会保険料の免除は終了し、給与に応じた社会保険料が発生します。
- 育児休業給付金: 育児休業が終了しているため、給付金の支給は終了します。
- 会社との合意: ならなしい勤務として扱うかどうか、期間や勤務時間、賃金について会社と合意し、内容を書面などで確認しておくことが重要です。
どちらのパターンになるかは、会社の就業規則、規程、そして会社との話し合いによって決まります。ご自身の希望を伝えつつ、会社とよく話し合い、取り扱いを明確にしてください。
会社との確認事項リスト:慣らし保育と職場復帰に向けて
会社との話し合いの中で、以下の点を具体的に確認しておくことを推奨します。
- 慣らし保育期間中の私の扱いは、育児休業期間の継続となるのか、それとも一時的な「ならし勤務」となるのか。
- 慣らし保育中の勤務時間や日数はどのように調整できるか。
- 慣らし保育中に勤務した場合、賃金はどのように計算されるか。
- 慣らし保育期間中の社会保険料や雇用保険料の取り扱いはどうなるか(育休終了なら免除終了)。
- もし育児休業期間中に慣らし保育を利用する場合、育児休業給付金への影響はないか、確認事項はあるか。
- 最終的な職場復帰日はいつになるか(慣らし保育終了の翌日か、ならし勤務終了の翌日か)。
- 職場復帰にあたって、会社に提出すべき書類(職場復帰届など)はあるか。提出期限はいつか。
- 復帰後の勤務形態(フルタイムか、時短勤務か)についても、改めて確認する。
これらの点を明確にしておくことで、ご自身の給付金や社会保険料、そして会社での取り扱いについて正確に把握し、安心して復帰準備を進めることができます。
チェックリスト:慣らし保育と職場復帰に向けた手続き
慣らし保育と職場復帰の手続き漏れがないか、以下のリストで確認しましょう。
- [ ] 保育園の慣らし保育期間と開始日、終了日を確認した
- [ ] 会社に慣らし保育期間と職場復帰予定日を報告・相談した
- [ ] 会社との話し合いで、慣らし保育期間中の自分の取り扱い(育休継続か、ならし勤務か)を明確にした
- [ ] 慣らし保育期間中の勤務時間・日数について会社と合意した
- [ ] 慣らし保育期間中の給与・手当について会社と確認した
- [ ] 社会保険料・雇用保険料の取り扱いについて会社と確認した
- [ ] 育児休業給付金への影響や確認事項について会社またはハローワークに確認した
- [ ] 最終的な職場復帰日を会社と確定・共有した
- [ ] 職場復帰に必要な書類を会社に確認し、準備を進めている
- [ ] 必要に応じて、慣らし保育期間中の取り決め内容を書面で確認した(メール等でも可)
会社との話し合いが難しい場合の相談先
もし会社が慣らし保育期間中の調整に理解を示さなかったり、法律に反する不当な取り扱いをされたりするなど、会社との話し合いがうまくいかない場合は、一人で抱え込まずに外部の専門機関に相談することも検討してください。
- 労働組合: 会社の労働組合があれば相談できます。
- 労働局(総合労働相談コーナー): 都道府県労働局には総合労働相談コーナーが設置されており、労働問題に関する相談を無料で受け付けています。会社の対応に疑問や不安がある場合に相談できます。
- ハローワーク: 育児休業給付金や雇用保険に関する手続き、育児休業中の就労に関する相談などが可能です。
- 弁護士: 労働問題に詳しい弁護士に相談することも選択肢の一つです。有料となる場合が多いですが、法的な観点からのアドバイスや、会社との交渉を依頼できます。
これらの機関に相談することで、法的な権利を確認したり、具体的なアドバイスを得たりすることができます。
まとめ
保育園の慣らし保育期間は、お子さまだけでなく、職場復帰を控えた保護者の方にとっても重要な移行期間です。この期間を安心して過ごし、スムーズに職場復帰するためには、会社との事前の情報共有と具体的な取り決めの確認が不可欠です。
特に、中小企業で前例が少ない場合は、ご自身から積極的に会社に相談し、就業規則や育児・介護休業法に基づく権利を確認しながら進めることが大切です。この記事でご紹介した確認事項やチェックリストを活用し、会社との連携を密に取ることで、手続きの抜け漏れを防ぎ、自信を持って職場復帰を迎えてください。