産休・育休中の給与・賞与・評価ガイド:知っておくべきこと
産休・育休中の給与、賞与、評価への不安を解消する
産前産後休業(産休)や育児休業(育休)は、出産・育児を控える方にとって非常に重要な制度です。しかし、休業期間中の生活費や、その後のキャリアへの影響、特に給与、賞与、人事評価がどうなるのかについて、不安を感じる方も少なくないかもしれません。
特に中小企業にお勤めで、過去に産休・育休の取得前例が少ない場合、会社に確認すべきことや、自身の権利について、ご自身で情報を集める必要があるかもしれません。
このガイドでは、産休・育休期間中の給与、賞与、そして人事評価について、知っておくべき基本的なルールと、会社に確認すべきポイントを解説します。法的な根拠に基づいた情報を提供し、皆さまが安心して休業期間を過ごし、その後のキャリアプランを考えられるようサポートいたします。
産休・育休中の給与はどうなるのか
まず、産休・育休期間中の「給与」についてご説明します。
労働基準法に基づく産前産後休業、および育児・介護休業法に基づく育児休業期間中は、法律上、会社が労働者に対して給与を支払う義務はありません。したがって、原則として休業期間中は無給となります。
ただし、会社によっては独自の就業規則や賃金規程で、産休・育休中に給与の一部または全部を支払うことを定めている場合があります。まずはご自身の会社の就業規則や給与規程を確認することが重要です。
給与が支払われない場合でも、健康保険や雇用保険から給付金を受け取ることができます(詳細な給付金については別の記事で解説しています)。また、産休・育休期間中は社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)が免除される制度もあります。これらの公的な制度を利用することで、休業中の経済的な負担を軽減することができます。
産休・育休中の賞与はどうなるのか
次に、賞与(ボーナス)への影響についてです。賞与の支給は、基本的に会社の業績や個人の貢献度に応じて行われるため、就業規則や賃金規程に定められた計算方法や査定期間に基づきます。
産休・育休期間が賞与の査定期間に含まれる場合、その期間中の働きに応じて賞与が支給されるか、あるいは計算方法が調整されるかは、会社の規程によって異なります。
重要なのは、育児・介護休業法第10条や第16条において、労働者が産休や育休を取得したこと、あるいは申請したことを理由として、解雇や減給、降格などの不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されているという点です。
したがって、賞与の計算において、単に休業期間があったという事実だけをもって不当に不利益な扱いを受けることはありません。しかし、賞与の計算方法が「査定期間の実績に基づいて行う」と定められている場合、休業期間中の「実績」がないことによって賞与額が変動することはあり得ます。
会社によっては、休業期間を考慮した賞与規程を設けている場合もあります。ご自身の会社の就業規則や賃金規程で、賞与の計算方法や、休業期間がどのように影響するかを確認してください。不明な場合は、人事担当者に問い合わせるのが最も確実です。
産休・育休中の人事評価はどうなるのか
人事評価も、多くの取得予定者が気にする点です。昇給や昇進、配置転換など、その後のキャリアに影響する可能性があるからです。
育児・介護休業法では、産休・育休を取得したことを理由とする不利益な取り扱いは禁止されています。これは人事評価においても同様です。休業の取得自体を理由として、評価を不当に低くしたり、昇進・昇格から排除したりすることは法律違反となります。
しかし、評価が「一定期間の業務遂行能力や実績」に基づいて行われる場合、休業期間中の実績がないことによって、その期間に関する評価要素が調整されることはあり得ます。重要なのは、評価の基準やプロセスが、休業の取得を理由とした不当な差別になっていないかという点です。
会社の人事評価制度がどのように定められているか、就業規則や評価規程を確認してください。特に、休業期間が含まれる評価期間について、どのように評価が行われるのか、事前に会社に確認しておくと安心です。
中小企業における確認のポイント
中小企業では、産休・育休の取得前例が少なく、制度や規程が十分に整備されていない、あるいは担当者が制度に詳しくないといった状況も考えられます。このような場合に、ご自身で積極的に確認を進めることが重要になります。
- 就業規則・賃金規程・評価規程の確認: これらが文書化されているかを確認し、産休・育休に関する記載、給与・賞与・評価の計算方法に関する記載を丁寧に読み込んでください。不明な点は必ず担当者に質問します。
- 会社独自の規定の有無: 法定以上の手厚い制度(給与の一部支給など)がないか、あるいは慣習として行われている対応がないかを確認します。
- 担当者とのコミュニケーション: 人事や総務の担当者がいる場合は、制度や手続きについて具体的に質問します。担当者がいない、または詳しい人がいない場合は、代表者や直属の上司に確認することになります。確認した内容はメモに取り、可能であれば書面で回答をもらうと、後々の誤解を防ぐことができます。
- 前例がない場合の対応: 前例がないからといって、法律上の権利がなくなるわけではありません。育児・介護休業法などの根拠を示しつつ、会社と丁寧に話し合いを進める姿勢が大切です。
不安な場合は、すぐに一人で抱え込まず、公的な相談窓口(後述)を利用することも検討してください。
会社に確認しておきたいことリスト
産休・育休中の給与、賞与、評価に関して、会社に具体的に確認しておきたい事項を以下にまとめました。担当者との話し合いの際に活用してください。
- 産前産後休業中および育児休業中の給与支給の有無とその金額、計算方法
- 賞与の査定期間に休業期間が含まれる場合の計算方法や影響
- 人事評価の期間に休業期間が含まれる場合の評価方法や基準
- 昇給・昇進の検討タイミングや基準に、休業期間がどう影響するか
- 復帰後の配置やキャリアに関する会社の考え方(これは評価と関連する重要な点です)
- 就業規則、賃金規程、評価規程などの関連規程の確認方法
これらの点を事前に確認しておくことで、休業中の経済的な見通しを立てやすくなり、復帰後のキャリアに対する不安も軽減されるはずです。
困ったときの相談先
会社との話し合いで疑問が解消されない場合や、不利益な取り扱いを受けていると感じる場合は、一人で悩まず外部の相談窓口を利用することを検討してください。
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室): 育児・介護休業法に関する相談や、会社とのトラブル解決の援助を求めることができます。
- ハローワーク: 雇用保険に関する給付金の手続き相談だけでなく、育児休業に関する一般的な相談も可能です。
- 弁護士: 法的な観点からのアドバイスや、会社との交渉を依頼することができます。労働問題に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。
まとめ:安心して産休・育休期間を過ごすために
産休・育休中の給与、賞与、評価は、休業期間中および復帰後の生活やキャリアに大きく関わる重要な要素です。原則として休業期間中は無給であること、賞与や評価は会社の規程によるところが大きいものの、休業取得を理由とする不利益な扱いは法律で禁止されていることを理解しておくことが第一歩です。
特に中小企業にお勤めの方は、就業規則などの規程を自身で確認し、会社の担当者と丁寧にコミュニケーションを取りながら、不明な点をクリアにしていく姿勢が大切です。事前にしっかりと情報収集と確認を行い、計画的に準備を進めることで、安心して産休・育休を取得し、その後のキャリアにつなげることができます。
この情報が、皆さまの産休・育休の準備に少しでもお役に立てれば幸いです。